Tax Shelter(4)

      東京高等裁判所は次のように判示しました。

 

 

 

 

 本件において、X、A社、B社及びS財団につき、P1及びP2が代表取締役、理事長、取締役等に就任し、S財団がXの株式の約50%、XがA社の株式の100%をそれぞれ保有し、S財団の100%出資により、本件増資決議の日(平成7年2月13日)、B社が設立され、A社は、持株会社としての活動、融資、投資等を目的とし、設立(平成3年)後本件増資時(同7年)まで、事業所を有せず、従業員のいないいわゆるペーパーカンパニーで、Xは、A社の全株式200株を保有していたが、本件増資により、持株割合により示せば、Xのそれが16/16から1/16(200/3200)に減少し、B社のそれが15/16(3000/3200)となった。

 

 上記認定事実の下においては、A社における上記持株割合の変化は、上記各法人及び役員等が意思を相通じた結果にほかならず、Xは、B社との合意に基づき、同社からなんらの対価を得ることもなく、A社の資産につき、株主として保有する持分16分の15及び株主としての支配権を失い、B社がこれらを取得したと認定評価することができる。

 

 そして、Xが上記資産に係る株主として有する持分をB社からなんらの対価を得ることもなく喪失し、同社がこれを取得した事実は、それが両社の合意に基づくと認められる以上、両社間において無償による上記持分の譲渡がされたと認定することができる。

 

 両社間における無償による上記持分の譲渡は、法22条2項に規定する「無償による資産の譲渡」に当たると認定判断することができる。尤も、上記「持分の譲渡」は、同項に規定する「資産の譲渡」に当たるとすることに疑義を生じ得ないではないが、「無償による・・その他の取引」には当たると認定判断することができるというべきである。

 

 すなわち、上記規定にいう「取引」は、その文言及び規定における位置づけから、関係者間の意思の合致に基づいて生じた法的及び経済的な結果を把握する概念として用いられていると解せられ、上記のとおり、XとB社の合意に基づいて実現された上記持分の譲渡をも包含すると認められる。

 

 そして、本件において、法22条2項に規定する無償による「資産の譲渡」又は「その他の取引」は、遅くも、B社により引き受けた増資の払込みがされた時に発生したと認められる。

 

 本件増資は、いわゆる節税を意図して企画されたことは明らかで、納税者として、いわゆる節税を図ることは、もとより、なんら正義に反することではない

 

 本件訴訟につき、A社とB社間の行為で、XとB社間に何らの行為もないことを理由に法22条2項の適用を否定するのは、裁判所としての事実認定の責務を果たしておらず、判決の理由としても、不備がある。

 

 

 

 

と先日の東京地裁の原判決を取り消し、税務署を勝たせました。

 

 

 

 

 

 

 

 最高裁判所第三小法廷 (平成18年1月24日)も高裁の判断を支持し、XからB社に移転したA社の資産価値を算定すると、255億7926万6285円となるから、Xは、本件事業年度において、同額の収益を得るとともに、B社に対する同額の寄附金を支出したものというべきである、としました。

 

 また、Xの保有するA社株式に表章された同社の資産価値については、Xが支配し、処分することができる利益として明確に認めることができるところ、Xは、このような利益を、B社との合意に基づいて同社に移転したというべきである。

 

 したがって、この資産価値の移転は、Xの支配の及ばない外的要因によって生じたものではなく、Xにおいて意図し、かつ、B社において了解したところが実現したものということができるから、法人税法22条2項にいう取引に当たるというべきである、と判示しました。

 

 

 

 法人が資産を他に譲渡する場合には反対給付を伴わないものであっても、譲渡時における資産の適正な価額に相当する収益を認識すべきであり、XとB社との合意に基づく経済的価値の移転が法人税法22条2項の取引に該当し、課税要件を構成することとなりました。