Tax Shelter(2)

 

キャピタルゲイン非課税の国を経由するTax Shelterの事例について検討してみます。

 

 

Xは内国法人で同族会社に該当します。

 

 

 Xは平成3年9月4日、現物出資及び現金出資により、オランダにXの100パーセント出資の子会社としてA社を設立しました。

 

 出資総額は16億5000万円に対し、発行された株式は、額面金額1株当たり1000オランダギルダーの株式が200株であり、同額面金額合計20万ギルダー(1ギルダーを75円として1500万円)を超える出資額は、A社において全額資本準備金として処理されました。

 

 Xは、法人税法51条(ただし、平成10年法律第24号による改正(以下「平成10年改正」という。)前のもの。外国子会社設立の際の現物出資についても、いわゆる圧縮記帳による課税の繰延べを認めていた。)に基づき、上記の現物出資につき、帳簿価額により出資したものとして、発行された株式の額面を超える部分の出資金額を圧縮記帳しました。

 

 Xは、平成7年2月13日のA社の株主総会において、A社が新たに1株当たりの額面金額1000ギルダーの新株3000株を発行し、その全部を、額面金額合計300万ギルダーに3万0303ギルダーを加えた303万0303ギルダー(1株当たり1010.1ギルダー)でB社に割り当てる旨の決議をしました。

 

 当時、A社の定款4条3項は、株式の発行及び株式取得権の授与に関して株主は優先権を持たないことを規定し、また、同条1項は、株主総会が株式の発行価格と発行条件を定めることを規定していました。

 

 また、同定款には、A社が発行する株式の中に異なる種類のものがあることは定められておらず、株主は、1株につき1票の議決権を有しており、株主総会決議は、全議決権の絶対過半数で成立するとされていました。

 

 B社は、平成7年2月15日、上記303万0303ギルダーの増資払込をし、A社は、増資株式全部をB社に割り当て、同年4月20日、増資の登記手続をし、上記払込金額のうち発行した株式の額面金額合計300万ギルダーを超える3万0303ギルダーを資本準備金として処理しました。

 

 これにより、XのA社株式の保有割合は、従前の100パーセントから6.25パーセントとなり、B社が93.75パーセントの割合でA社の株式を保有することとなりました。

 

 A社は、平成9年8月18日、株主総会決議により定款を変更し、種類株についての定めを設けました。変更後の種類株は、残余財産分配請求権が変更前の普通株に優先するが、その額が額面額に限定される点が変更前の普通株と異なっていました。

 

 本件定款変更においては、株主総会決議は有効投票の95パーセント以上をもって成立することに変更されました。

 

 本件決議当時におけるA社株式の資産価値が1株当たり234万6252.55ギルダー(1億3648万1511円)であったのに、Xが、その価値を著しく下回る1株当たり1010.1ギルダー(平成7年2月15日時点で1ギルダーは58.17円)で3000株もの新株をB社に発行する本件決議をすることにより、Xが保有していたA社株式の資産価値272億9630万2219円を一挙に17億1703万5934円まで減少させ、その差額である255億7926万6285円相当額を、何らの対価も得ずにB社に移転させました。

 

 

 

 

まとめと論点

 

 本件では日本の内国法人Xが全国朝日放送株式会社株式3559株(受入価額11億0500万円)、株式会社文化放送株式15万株(受入価額4億3900万円)を現物出資してオランダ子会社A社を設立し、当該株式をオランダ関係会社B社に移転しました。

 

 その後オランダ子会社B社が別のオランダ法人に当該株式を売却し、さらに当該別のオランダ法人が内国法人Xの子会社に売却したのです。オランダにおいて法人間の株式の譲渡益は非課税であるというのが重要なポイントとなります。

 

 オランダで実現した、本来は日本の内国法人Xに帰属するキャピタルゲインについて、わが国の課税権は及ぶのであろうかというのが論点となります。

 

 

ちなみに増差税額は約96億円で、Xの死命を制しかねない事案でした。