交際費課税(2)

 

 支出の相手方が事業に関係のある者ではないことを立証するためXは次のように述べます。

 

 Xは、海外の雑誌に研究論文を発表したいという若手研究者を支援すべく、昭和60年から、英文添削の依頼を受けるようになった。

 

 英文添削の依頼を受けるに際し、Xは、医療用医薬品卸売業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約(昭和59年公正取引委員会告示第35号、公正競争規約)に違反することを懸念し、事前に公正取引協議会に確認したところ、同協議会から、国内の英文添削業者と同額の料金を徴収するようにとの指導を受けた。

 

 そこで、Xは、国内業者の平均的な料金を調査した結果に基づき、研究者らから英文添削の依頼を受ける際、1頁当たり1500円の料金を徴収することとした。

 

 本件英文添削の対象は、国内の医科系大学、総合大学の医学部、その付属病院及び医療機関等、約95の機関に所属する研究者らに限定されていた。

 

 そのうち大学病院等の医療機関はすべてXの製造、販売に係る医薬品の取引先であったが、Xの売上実績からすれば、必ずしも上位を占めるものではない。

 

 また、これら95の機関は大学の医学部やその付属病院あるいはそれに近い性格を有しており、いずれも高度、かつ、先端的な研究をする医療機関ではあるが、必ずしもXの大口の取引先というわけではない。

 

 なお、Xの売上全体の中で大学病院の占める割合は、10パーセント以下であり、その多額を占めるのは開業医又は病床数100床未満の小規模病院である。

 

 平成7、8年当時の全国の病院数は9000以上であったが、そのほとんどが控訴人の取引先であった。

 

 また、Xは、大学の付属病院などの医療機関にMRを派遣していたところ、本件英文添削の依頼はMRを通じて依頼されることが多かった。Xは、その依頼を受けるMRに対し、取引を誘引する行為を禁じた公正競争規約に違反しないよう、本件英文添削を取引の条件としたり、取引の条件としているような印象を与えないことを指導していた。

 

本件英文添削の依頼者は、主として若手の講師や助手であり、Xの取引との結びつきは決して強いものではなかった。

 

 

 

これらの立証に対し、東京高裁は次のように判示しました。

 

 本件英文添削の差額負担の支出の相手方についてXは、主として医家向医薬品の製造、販売を事業内容とする株式会社である。医師は医業を独占し(医師法17条)、患者に対する薬剤の処方や投与は医業に含まれるから(医師法22条)、医師は、控訴人のような製薬会社にとって、租税特別措置法61条の4第3項にいう「事業に関係のある者」に該当するというべきである。

 

 そして、本件英文添削の依頼者の中には、研修医や大学院生などのほか、医療に携わらない基礎医学の講師や海外からの留学生も含まれていたが、他方、大学の医学部やその付属病院の教授、助教授等、Xの直接の取引先である医療機関の中枢的地位にあり、医薬品の購入や処方権限を有する者も含まれていたことからすれば、全体としてみて、その依頼者である研究者らが、上記「事業に関係のある者」に該当する可能性は否定できない。

 

つまり、支出の相手方が事業に関係のある者ではないとは言えない、と判断されたのです。

 

 

 

 X次の手を打たなければ、課税されてしまいます。

 

 次に考えるべき要件は、本件の添削の差額負担の支出の動機、金額、態様、効果等が、事業関係者との親睦の度を密にし、取引関係の円滑な進行を図るという接待等の目的でなされたものであるのか?という要件です。

 

 

これはどのように立証すべきでしょうか?