交際費課税(1)

企業が支出した金額が交際費に該当するかはどのように判定すればよいでしょうか?

 

 交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいいます。

 

次の事例を考察してみましょう。

 

 Xは、その医薬品を販売している大学病院の医師等から、その発表する医学論文が海外の雑誌に掲載されるようにするための英訳文につき、英文添削の依頼を受け、これをアメリカの添削業者2社に外注していました。

 Xは、医師等からは国内業者の平均的な英文添削の料金を徴収していたものの、外注業者にはその3倍以上の料金を支払い、その差額を負担しており、その金額は、1億4513万円余、に及んでいました。

 そこで、税務署は、英文添削の依頼をした医師等が控訴人の「事業に関係ある者」に該当し、本件負担額の支出の目的が医師等に対する接待等のためであって、本件負担額は交際費に該当するとし、租税特別措置法の規定によって損金に算入されないとして、Xの法人税について更正処分をしました。

 一方Xは、本件負担額は、交際費ではなく損金の額に算入が認められる寄附金であると主張しました。

 

X側としては次のように主張します。

 

 租税特別措置法第61条の4の「交際費等」に該当するか否かは、同条3項の規定により、支出の相手方が事業関係にある者といえるか否か、及び支出の目的が接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為を意図するものであるか否かによって判断される。

 

 そして、支出の目的が接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為を意図するものであるか否かは、当該支出の動機、金額、態様、効果等の具体的事情が総合的に判断されなければならない。

 

 また、交際費等は、一般的に、支出の相手方及び目的に照らして、取引関係の相手方との親睦を密にして取引関係の円滑な進行を図るために支出するものと理解されている。

 

 そうすると、支出の相手方が事業関係者といえるか否かの判断では、かかる相手方と親睦を密にして取引関係の円滑な進行を図ることができるか否か、また、かかる支出が、その相手方と親睦を密にして取引関係の円滑な進行を図るためといえるか否かが検討されなければならない。

 

 本件でこれをみるに、控訴人が英文添削費用の差額を負担した者の多くは大学の医学部又は医科系大学に所属する研究者であるが、その中には、控訴人が製造・販売する医薬品の処方に携わらない基礎医学の研究者や、処方権限のない留学生、研修医、大学院生、大学又は付属病院の職員でない医員、さらに、付属病院が新たに医薬品を購入する際に全く関与しない者が多く含まれている。

 

 

 

これに対し税務署は次のように主張します。

 

 本件英文添削及びその経済的負担額は、客観的状況からみて、支出の相手方である医師等にとって、一般的な飲食等に代表される接待交際と実質的に何ら変わりがない精神的及び経済的な欲望を満たすものである。

 

 製薬業者であるXは、医師等のそうした欲望を満たすことが、取引先である医師等との緊密な人間関係を構築するための有効な手段であることを十分に認識していたし、医師等も、製薬業者であるXが医師等の欲望を満たす行為として、本件英文添削を利用していることを十分に認識できる立場にあった。

 

 交際費等に該当する第1の要件は、「支出の相手方が事業に関係のある者であること」であるが、「事業に関係ある者」とは、直接及び間接に当該法人の事業に関係ある者や将来事業に関係を持つに至るべき者を含むというべきであり、その範囲は相当に広い。

 

 

 

 

本件でまず考察するのは「支出の相手方が事業に関係のある者である」かという点です。

 

事業に関係のある者でないことの証明のため、Xはどのような証拠を税務署に提示すれば良いでしょうか?