みなし相続財産(1)

 名義借用財産は、認定の問題ですが、相続税法第9条で、相続財産、贈与財産とみなされる財産はさらに注意が必要です。

 

 

 名義借用財産は、「名義預金」「名義有価証券」の真実の所有者の帰属の判定に基づき被相続人の相続財産と認定されるのに対し、相続税法第9条のみなし相続等財産は経済的利益の帰属の判定のみで、相続等財産とみなされてしまうのです。

 

 例えば認知症である夫(被相続人)の妻が、夫の生前に夫名義の預金口座から現金を出金し、個人的に費消した場合や、その費途が不明な現金については、相続税法第9条により、「妻が当該現金を個人的に費消した時において、現金を費消することによる利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額を夫から贈与により取得したものとみなされるのです。

 

 

 認知症の方の介護には、何度も何度も同じことを尋ねられる、一生懸命に介護をしても暴言を吐かれるなど、身体に障害をもつ方の一般の介護にはない多くの大変さがあります。介護をする家族は、自分達の苦しみが誰にも理解されずに孤独を感じることにあり、精神的なストレスはかなり大きいものです。

 

 ストレスが溜まると、日用品や食料品を余計に買ったりして、気分を発散させるという、買い物依存傾向は、誰にでも見られます。

 

 認知症の夫の介護でストレスのたまった妻が、夫の預金口座から現金を引き出し、買い物等をして発散する行為は不法行為を構成するのでしょうか?

 

税務署は次のような主張をしてきます。

 

「税務署が職権で調査した夫の生前の預金口座から引き出された現金のうち、夫のために支払われたと認定

 される金額以外の現金の支出は、不法行為によるものであるしたがって、夫は妻に対し費途不明金に相

 当する金額の損害賠償請求権を有している。当該損害賠償請求権は被相続人である夫の相続税の課税価格

 の計算上、相続財産として計上すべきである。」

 

 

これにはどのように反論すべきでしょうか?