名義借用財産(2)

     妻のへそくりは誰の財産?

 

 

 夫が妻にお金のことをまかせる、というのはよくあることで、妻が生活費を切り詰めて、毎月少しずつへそくる、というのもよくある話です。

 妻が夫に内緒で貯めたへそくり預金は、名義が妻のものであっても、先日の子供名義の定期預金と同様、資金原資基準に基づき夫の財産として取り扱われ、名義借用財産と認定されることが想定されます。

 

 

 

 

 

実際の税務調査での非違が指摘される割合はどれくらいなのでしょう?

 

 

 

 平成22年分の被相続人数は約120万人、このうち相続税の課税対象となった被相続人数は約5万人で、相続税が課税される割合は4.2%となっています。

 

 相続税の税務調査については、平成20年中及び平成21年中に発生した相続を中心に、国税局及び税務署で収集した資料情報を基に、申告額が過少であると想定されるものや、申告義務があるにもかかわらず無申告となっていることが想定されるものに対して実施されました。

 

 この税務調査の件数は13,668件で申告案件の約3件に1件の割合となっています。

 

 税務調査の対象とされたうち税務署に申告漏れ等の非違を指摘された件数は11,276件でなんと調査件数の約82%に達するのです。

 

 

 

 

税務調査で発見される申告漏れはいったいどのような資産なのでしょうか?

 

 

 相続財産の金額の構成比は、土地48.4%、現金・預貯金等23.2%、有価証券12.1%の順となっています。

 

 評価が難しいものが土地、取引相場のない有価証券等なので、評価に誤りがあったとして申告漏れを指摘されるのかと思いきや、非違が指摘された相続財産トップは現金・預貯金等の1,332億円です。続いて土地の719億円、有価証券の631億円の順となっています。

 

 すなわち時価を一番把握しやすい現金・預金等が申告漏れを指摘されており、これは申告漏れ相続財産の約33%を占めているのです。

 

 これは多額の現金を畳の下に敷き詰めていた場合等(現ナマ保有派。少数派)を除き、名義借用財産と認定されたものが多数を占めると想定されます。

 

 今後の税制改正で相続税の基礎控除額が引き下げられることとなった場合、普通のサラリーマンの家庭が相続税の課税対象となり、あわてて金融資産を家族間で移転し、名義借用財産の認定をされるという案件が増えることが予想されます。