名義借用財産(1)

 名義借用財産とは、自分の財産でありながら他人の名義で所有している財産のことをいいます。

 

 

 被相続人(故人)が子の名義で貯金をしていた場合、実質的に被相続人(故人)の財産であることが立証、挙証された場合、被相続人(故人)の財産となり、相続税の課税対象財産となります。

 

 子の名義である預金の預金者帰属の認定についても客観説が採用されるのです。

 

 預入行為が出捐者である被相続人によりなされた場合はもちろん、他の者である相続人である子を預金者として預入行為をしたとしても、一定の場合、出捐者である被相続人をもって預金者と認定する基準が採用されます。

 

 

 金融機関では,預入行為者の公的身分証明証等によって厳格な本人確認を行っていますが、不特定多数の者を対象として,日夜大量かつ没個性的に行われる取引であるキャッシュカードを利用する取引では、預金者の確認することがありません。 

 

 払戻しの場合も、キャッシュカードと暗証番号を入力することによって、払戻しがなされます。

 

 そこで、預金者確定の問題にあっては,契約に関する一般法理は,その適用の範囲が限定されざるを得ず、契約解釈の問題として、預金契約における当事者の意思表示理論から預金者を導くことは事実上できないとされます。

 

 

 民法上贈与は当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力が生じます。そこで、相続税の課税を回避するために、子らの名義を使って定期預金の積み立てを開始し、贈与税がかからないように、贈与税の非課税限度額内で、預金をした場合に、その管理、運営、払い戻し(管理支配基準)と定期預金原資の形成(資金原資基準)、が被相続人によるものであると認定されると、その定期預金にかかる贈与は否定され、相続税の課税対象財産となります。

 

 また、その定期預金が被相続人に帰属するものであると認定されないように、毎年積立金額を変えつつかつ贈与税を申告・納付していたとしても、贈与税の申告・納付のみをもって帰属の認定はされませんので留意が必要です。